信用を失うリスク

前回は、オートキャド(AutoCAD)の「学生版」が実際の仕事では使えない理由についてお話をしました。

信用という、仕事をやっていく上で最も大切なモノを失う恐れがあって、それは学生版の安さによる金額的なメリットを大きく上回る。

そのあたりのバランスを良く考えて、プロとして自分が使用するソフトを選定したいものです。

まあこれは当たり前の話だとは思いますが……

それでも私は時々、学生版を使って仕事をしている人に遭遇することがあるので、しつこいくらいに同じ事を書いてます。

このあたりのけじめは本当にきっちりしておかないと、後で自分自身が痛い目に遭うことになるだけです。

そんな思いをしないように、やはり仕事で使うオートキャド(AutoCAD)はしっかりと用意をしておきましょう。

とは言っても、ほとんどの場合は会社がきちんと用意をすることになるはずですから、個人が心配することはないはずです。

しかし、個人事業として在宅勤務を考えている方であれば、自分でオートキャド(AutoCAD)を用意する必要があります。

そうした時の為に、今回の話を頭の片隅にでも入れておいて頂ければと思います。


■学生版で作図された図面の扱い

私は仕事でオートキャド(AutoCAD)を使って図面を作図していて、人に作図を頼む機会も割と多いです。

そんな中で、何年かに1回くらいの割合で「学生版で作図しました」という図面を受け取る機会があります。

もちろんその方が自分からその事実を言う訳ではないのですが、データを受け取って図面を印刷してみればすぐに分かります。

その時にどうするかは人によって様々だとは思いますが、私の場合は非常にシンプルな対応をしています。

単純に、図面の内容や間違いの有無などチェックをしないで、そのまま相手に図面を返します

まあ「図面を返す」と言っても、データで送られてくる訳ですから、文字通り突き返すという意味ではありません。

単純に「受け取れません」という返事をする感じです。

「学生版で作図している人がいるみたいですけど」ということは言いますが、その図面をチェックする気にはどうしてもなれません。

それはなぜか。

印刷する際に大きく「学生版ですよ」と表示されるにも関わらず、そのまま図面を送って来るあたりがその理由です。

その事実が意味することは、以下のいずれかしかありません。

・実際に図面を印刷してチェックをしていない

・そうした「しるし」が問題になることを知らない

私としては、その状態で図面を送ってくる理由がどこにあるのかにそれほど興味はありません。

が、少なくとも作図された方は、自分が作図した図面を印刷してチェックしていない、ということだけは確かです。

もしくは印刷した図面に、自分が書き込んでいない文字が記入されていても、それに気が付かなかった可能性もありますが。

まあ理由は何であっても、自分で作図した図面のチェックをしていないというのは、やはりプロとして失格じゃないかと思います。

学生版のオートキャド(AutoCAD)を使って仕事をしている方に対し、プロ意識の有無を問いかけるのが効果的かはわかりませんが……

少なくとも、学生版を使っていることが分かった時点で、その図面には何らかの問題があるということになると思います。

図面の内容を見る気になれないのは、そうした理由からなんです。

■1つのデータで失うもの

前回も書きましたが、こうしたデータを相手に送ることによって、自分自身の信用レベルが確実に下がってしまいます。

オートキャド(AutoCAD)を使って図面を作図するプロなのに、「この人は作図した図面を自分で確認しないんだ」と思われる。

そうすると、ちょっと間違えたときにも「やっぱりな…」と思われてしまい、良いことはひとつもありません。

通常のオートキャド(AutoCAD)LTと学生版との価格差は20万円程度ですが、それ以上のものを失うということになる訳です。

これは本当に怖い話です。

そしてそれ以上に怖いのが、そうしたデメリットに気が付かないで仕事をする、ということです。