昔は手で作図が当たり前

前回はオートキャド(AutoCAD)の価格が高いという感覚について、昔に比べれば恵まれているんじゃないか、という話をしました。

ただ、昔に比べれば50万円でもまだ安い、とは言っても、やはり高いものは高いという感覚はあります。

確かに昔に比べれば便利になったのかも知れませんけど、使う度に昔と比べて感動する訳ではないですからね。

だから、オートキャド(AutoCAD)はやっぱり高いな……という感覚は本当に良く理解出来ます。

しかしそれでも、昔を知っている私にとっては「50万円のオートキャド(AutoCAD)は高い」という感覚に違和感を感じてしまうんですね。

しつこく書きますが、昔の不便で高いCADに比べれば、断然高性能で安くなったよな、と思う訳です。

もちろんそうした私の個人的な感覚を皆様と共有したい、という訳では全然ありません。

でも、少なくとも今のオートキャド(AutoCAD)の価格にはある程度納得をして欲しいという気持ちはあります。

という訳で、今回はもう少しだけ昔話をすることにして、CADが普及しはじめたぐらいの頃について思い出してみたいと思います。


■手描きに変わるツール

ご存じかどうかは分かりませんが、ほんの十数年前には、図面を作図するツールとして最も一般的なのは「手」でした。

まあ「手」とは言いながらも、プロが使うのは「ドラフター」などであった訳ですが、それでも自分の手で線を引くことに変わりはありませんでした。

いわゆる「手描き」という作図方法ですね。

この方法はとてもシンプルで分かりやすい方法ではあるのですが、熟練するまでに時間がかかることが難点でした。

しかし時代は少しずつ進んでいって、そのうちにパソコンが徐々に普及しはじめてきました。

とは言っても、まだパソコン自体が腰を抜かす位高額な商品でしたから、「普及」というには少し早い状態ではありましたけども。

そんな状態のパソコンを使って図面を作図する。

それが当時のCADであった訳ですが、私がそれを知った時には本当にショックを受けたことを記憶しています。

これは近い将来、作図ツールのスタンダードになるんじゃないか。

私はパソコンを使ったCADというシステムを目の前にして、そんな予感を抱いたことを良く覚えています。

■パソコンの性能も違う

ただし、当時のパソコンは大きい上に処理能力も低かった為、それが原因で様々な問題を抱えてもいました。

まずはパソコンの処理速度が遅いせいで、作図処理にかなり時間がかかった、という問題。

CADで線を1本引くような操作をすると、「よっこらしょ」という感じで線が作図されるんです。

それでも手で線を引くよりも正確な線が作図されるので、見ていて「おおっ」というような感覚ではありましたが……

今であれば遅すぎて全然お話しにならないレベルです。

パソコンも今の感覚で言うと、遅くて大きすぎる上に値段がバカみたいに高いという悲しい状況でした。

CADとパソコン一式を揃えると、とりあえず100万円単位の出費を覚悟する必要があった訳です。

20インチのディスプレイだけで、今の液晶ディスプレイ付のパソコンが3セットくらい買える感覚ですね。

ですからCAD一式を揃えようとすると、リースなどの形態も考える必要があって、というかリース以外に選択肢がないというか……

リースをしないで思い切って購入したとしても、高級車並の価格になるので分割払いにするしかありません。

ローンを支払い終えるまでには5年くらいかかりましたから、払い終える頃にはすっかり時代遅れで足手まといなCADになっているという。

そうした何もかも悲しい状態の昔に比べれば、今はパソコンの価格も手軽だし、処理速度も段違いに早くて良い感じです。

まあ今ではそれが当たり前なんですけど。

でも、当時の価格を考えてみると、オートキャド(AutoCAD)の値段も少しはまともに感じるのではないでしょうか。

別に私はAutodesk社の製品を推奨している訳ではないんですけど、プロが仕事で使うツールであれば、それくらいは出しても良いですよね。